主に消化管(食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、直腸)、肝臓、胆嚢、膵臓などに関係する疾患を取り扱います。腹痛、吐血、下血、だるさ、食欲不振、体重減少、黄疸などの症状の方はもちろんのこと、はっきりとした自覚症状は無いものの何となく体調が悪いと感じているような方も、消化器系の病気の可能性があります。
消化器内科の主な病気
- 炎症性疾患
- 逆流性食道炎、急性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、感染性胃腸炎(ノロウイルス感染、等)、大腸憩室炎、虚血性腸炎、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)など
- 腫瘍性疾患
- 食道癌、胃癌、大腸癌などの悪性腫瘍、粘膜下腫瘍やポリープなど
- 機能異常症
- 腸閉塞、便秘症、過敏性腸症候群など
このような症状がありましたら、ご相談下さい。
胃の痛み・胸の痛み・胸やけ・呑酸(どんさん)・げっぷ・のどのつかえ・のどの違和感・胃のもたれ・腹部膨満感・食欲不振・おう吐・腹痛・便秘・下痢・下血・肛門出血など
ピロリ菌除去
胃癌、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの主な原因とされているピロリ菌の除菌治療を積極的におこなっています。2013年2月から、胃潰瘍、十二指腸潰瘍のみならず、「慢性胃炎」にまでピロリ菌除菌治療の保険適用が拡大されました。内視鏡検査で慢性胃炎などが確認されたうえで、ピロリ菌感染が確認された場合には、早めの除菌治療をお勧めいたします。
■日本人のピロリ感染率の過去と将来予測
ピロリ菌は飲食物を介して経口感染します。特に上下水道の整備されていなかった戦争直後の時代に育ってきた方は感染率が高く、逆に衛生環境が改善された現代に育つ若年者は感染率が低いです。
ピロリ菌感染を放置した場合は炎症を繰り返すことにより慢性胃炎を合併します。そして慢性胃炎の一部の患者さんから胃癌が発生してきます。したがって胃癌症例の大部分がピロリ菌感染者です。
ピロリ菌陽性の慢性胃炎と判明した場合は、早期にピロリ菌除菌療法を受けられることが重要です。
逆流性食道炎
胃酸や十二指腸液が噴門(胃の入り口)から食道に逆流することで、食道の粘膜を刺激し、粘膜のただれや炎症を生じる疾患です。要因として最も多いのが食道裂孔ヘルニアです。食道は横隔膜の隙間(食道裂孔)を通って胸部から腹部に移行し胃につながっています。この隙間が主に加齢により緩くなり、胃の一部が胸部側に脱出した状態が食道裂孔ヘルニアです。下図に示すように滑脱型、傍食道型、混合型の3種類がありますが、いずれも胃の入り口(噴門)の弁機能が低下し、胃酸が逆流しやすくなり食道炎を併発します。
自覚症状としては (1)胸やけ、(2)胸痛、(3)つかえ感 が三大症状で、その他にのどの違和感や咳、口の苦味などがみられます。特に症状が出やすいのは夜間就眠時、明けがた、お酒・コーヒー・油ものなどを摂取した時などです。
■逆流性食道炎の内視鏡像
赤色の粘膜欠損部(びらん)と、その表面を覆う白い膜(白苔)を広範囲に認めます。
治療は強力な胃酸分泌抑制薬(プロトンポンプ阻害薬)の服用が基本です。具体的にはオメプラゾール、ランソプラゾール等です。服薬にて症状のコントロールが困難な例、あるいは再発を繰り返す例では手術療法が適応となる場合もあります。
気軽にご相談ください。
過敏性腸症候群
検査を行っても明らかな異常が認められないにもかかわらず、腹痛や腹部の不快感を伴って下痢や便秘、ガス過多による下腹部の張りなどの症状が起こる病態です。
20~40代の若年者に好発し、女性にやや多くみられます。またストレス社会の先進国に多く、一種の文明病とも考えられています。
原因は分かっていませんが、この病気の患者さんには消化管運動異常、消化管知覚過敏、心理的異常の3つが認められ、これらの要因が複合的に関与しているとされます。なかでもストレスなどの心理的要因が重要な因子であると考えられています。また近年、神経伝達物質であるセロトニンが病態に関係していることが分かってきました。ストレスによって腸のセロトニンが分泌されると、腸のぜん動運動に問題が生じ、下痢や便秘の症状が現れるとされています。
その病型は、便通の状態により以下の3つに分類されます。
- ●便秘型
- 慢性的な便秘になり、お腹が苦しく、思うように排便ができません。便は水分が少なく、硬いコロコロしたものしかでず、常に残便感を伴う場合があります。
- ●下痢型
- 突如として起こる下痢が特徴です。突然おそってくる便意が心配で、通勤や通学、外出が困難になります。また、そうした不安が、さらに病状を悪化させます。
- ●交代型
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便秘と下痢を繰り返します。
また、どの型にも起こり得る症状として、排便により軽快する傾向のある下腹部の痛みや不快感、おなら、腹鳴、膨満感、吐き気などがあります。さらに、めまい・頭痛・動悸・肩凝りなどの自律神経失調症状や不安感・落ち込み・イライラ・不眠などの精神症状がみられることもあります。
治療は、(1)生活・食事指導、(2)薬物療法、(3)心身医学的治療、の3つが基本になります。薬物療法は下痢に対して整腸剤・セロトニン受容体拮抗剤、便秘に対して緩下剤、腹痛には鎮痙(ちんけい)剤が投与されます。これらの薬剤で改善がみられない場合は、抗不安薬・抗うつ薬が考慮されます。
気軽にご相談ください。
胃癌
胃癌とは胃の粘膜に発生する悪性腫瘍です。従来、日本においては患者数・死亡者数とも悪性腫瘍の第1位でしたが、食生活の変化、検診の普及、治療の進歩で死亡率は徐々に減少しています。しかしながら、最近では高齢者の胃癌症例が相対的に増加しており、死亡者数はあまり変化がありません。
- 原因
- 最近の研究により、胃癌の根本的要因はヘリコバクター・ピロリという細菌の感染による慢性炎症と考えられています。すなわち、ピロリ菌に感染すると胃の炎症を繰り返すことにより慢性胃炎から萎縮性胃炎となり、この萎縮性胃炎の粘膜から胃癌が発生します。したがって胃癌患者のほとんどがピロリ菌感染者です。統計学的にはピロリ菌感染者は、陰性者と比較して胃癌の発生のリスクは5倍となります。
その他の胃癌発生危険因子としては塩分の多い食事、喫煙、アルコール摂取などが指摘されています。 -
図1: ピロリ菌感染の長期経過
- 症状
- 早期胃癌ではほとんど症状認められません。比較的初期の症状としては胃の不快感、嘔気、胃もたれ、食欲不振、上腹部痛が挙げられます。しかしこれらは胃炎の症状とほぼ同様であり、胃癌に特徴的な症状はありません。進行癌となると潰瘍形成に伴う出血や痛みの症状がより顕著となります。具体的にはタール便(黒色の便)、貧血症状(立ちくらみ、めまい)、体重減少、上腹部疼痛、等です。
- 早期癌と進行癌の違い
- 胃癌は胃の内側の粘膜層から発生します。そして大きくなるにつれて胃壁の奥へ浸潤していきます。この浸潤の深さを深達度と呼んでいます。深達度が粘膜下層までにとどまる場合は早期癌と診断します。粘膜下層を越えて固有筋層に浸潤している場合は進行癌と定義されます。さらに進行して胃の外側の膜(漿膜)を越えてしまいますと、他臓器への浸潤や腹膜転移をきたしてしまい、治療が難しくなります。いずれにしてもより早い段階で発見することが重要です。
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図2:胃壁の構造
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図3:進行胃癌の内視鏡像
2型(限局潰瘍型)進行胃癌の内視鏡像です。
腫瘍の中心部に深い潰瘍を認め、
周囲は隆起して周堤形成を認めます。
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- 治療方針
- 胃癌が発生する前の段階で予防策を講じることが重要です。
前述したように胃癌の大部分はピロリ菌感染胃炎から生じた萎縮性胃炎を発生母地としています。したがって、先ずはピロリ菌感染胃炎の存在診断、そして陽性の場合はピロリ菌除療法を早急に行うことが肝要です。 -
・ピロリ菌感染胃炎の診断
胃内視鏡検査が必要です。当院では苦痛のない内視鏡検査(経鼻内視鏡あるいは直径5mmの細径スコープを用いた内視鏡)を行っていますので、気軽にご相談ください。また朝食を食べていなければ当日でも検査はできます。
内視鏡検査で慢性胃炎、あるいは胃・十二指腸潰瘍が判明した場合にピロリ菌の存在診断(病理検査、培養検査、抗体検査、等)を実施します。陽性の場合はピロリ菌除菌療法の適応となります。 -
・ピロリ菌除菌療法
プロトンポンプインヒビター(抗潰瘍薬)1種類と抗生物質2種類(アモキシシリン+クラリスロマイシン)を1週間服用します。効果判定は1ヶ月以上経過後、主に尿素呼気試験という方法を用いて実施します。
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・早期胃癌の治療方針
早期胃癌でも粘膜層にとどまる癌(M癌)の場合は、内視鏡的に切除(ESD: 内視鏡下粘膜下層剥離術)が可能です。一方、粘膜下層の癌(SM癌)の場合は基本的には手術療法(腹腔鏡下胃切除術、等)が必要となります。
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・進行胃癌の治療方針
手術療法(腹腔鏡下手術あるいは開腹術)と化学療法(抗癌剤投与)を組み合わせた治療法が必要となる場合が多いです。
※万が一胃癌が判明した場合は、患者様のご希望に沿って専門病院を紹介します。
大腸癌
大腸癌とは大腸の粘膜に発生する悪性腫瘍です。従来、欧米人に多い癌で、日本においては患者数は胃癌ほど多くはありませんでした。しかし近年の食生活の欧米化(特に脂肪の多い肉食)により症例数は増大傾向にあります。現在では胃癌を抜いて消化器癌の中では最も頻度の高い疾患となりました。
- ■原因
- 基本的には複数の癌遺伝子(APC, K-ras, p53, 等)が発癌に関わっていると考えられています。また生活習慣における誘因としては脂肪の多い肉類(特に牛肉)、アルコール(特にビール)、タバコ(特に直腸癌と関連)、運動不足、肥満、便秘などが挙げられています。発生母地は小さなポリープであり、徐々に大きくなることにより前癌病変(腺腫)を経て大腸癌が発生するとされます。通常、小さなポリープから癌になるまでは数年の経過があります。
- ■症状
- 前癌病変の腺腫や早期大腸癌ではほとんど症状認められません。しかしながら微量の出血を伴いますので、大腸癌検診(便潜血反応)では陽性となる場合が多いです。進行癌となると腹痛、腹部不快感、腹部膨満感、便通異常(便秘と下痢の繰り返し、排便困難、便が細くなる、等)、下血(赤黒い便、便に鮮血付着する、等)が出現します。さらに進行しますと貧血症状(立ちくらみ、めまい、倦怠感)、体重減少、食欲不振の症状も認められるようになります。
- ■進行大腸癌の内視鏡像
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2型(限局潰瘍型)進行大腸癌の内視鏡像です。
腫瘍の中心部に深い潰瘍を認め、少量の出血がみられます。
周囲は隆起して周堤形成を認めます。 - ■予防策
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1:一次予防
日常生活や食生活に注意して、発癌の危険性を少しでも減らす予防策です。具体的には禁煙、肥満予防策としての適度な運動(ウォーキング、等)、食生活の改善(動物性脂肪制限、過度の飲酒を控える)が挙げられます。逆に食物繊維の多い野菜、ヨーグルトや乳酸菌飲料には大腸がんの予防効果が期待できますので、適度に摂取することが重要です。
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2:二次予防
定期的に検診を受け、早期発見・早期治療して完治させることをいいます。
一次予防だけで発癌を100%防げないので、同時に二次予防策が必要となります。便潜血反応検査は便中に存在する微量の血液にも反応し、スクリーニングとして汎用されています。健康診断の「大腸がん検診」は殆どの場合これをさしており、現在日本では概ね35歳から40歳以上の人に対して推奨されています。通常、2日法と言って2日分の検体を提出します。1回でも潜血反応陽性となった場合は大腸内視鏡(CF)による精密検査が必要となります。
検診の便潜血反応陽性率(要精検率)はおよそ5~10%です。そして便潜血反応陽性者の20%に大腸ポリープが、3%に大腸癌が発見されます。したがって大腸がん検診を1万人の人が受けたときに、500~1000人の人が便潜血陽性と診断され、そのうち100~200人が大腸ポリープと、また15~30人の人が大腸癌と診断されるくらいの割合です。
このように便潜血反応陽性の二次検診では大腸ポリープの方が発見される確率が高いです。しかし大腸ポリープの多くは前癌病変の腺腫であるため、大きさが5mmを超える場合は内視鏡的ポリープ切除術の適応となります。
当院では苦痛のない内視鏡検査をモットーに日帰りでの内視鏡的大腸ポリープ切除術も行っております。詳しくは当院に来院してご相談ください。■大腸癌の予防法
- 1:食生活
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- ●脂肪の多い肉食とアルコール(特にビール)は控えめに!
- 「ビールに焼き肉」・・・危険な組み合わせ!
- 「酎ハイで刺し身」・・・比較的良い。サラダも食べると理想的
- ●食物繊維の多い野菜類をこまめに摂取する
- 2:日常生活
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- ●禁煙
- ●適度な運動
- ●便秘に注意する!(規則的便通)
- 3:大腸癌検診
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- ●定期的検診(便潜血反応⇒大腸内視鏡)の励行
- ●前癌病変(腺腫)の段階でのポリープ切除
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- ■治療方針
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・早期大腸癌の治療方針
早期大腸癌でも粘膜層にとどまる癌(M癌)の場合は、内視鏡的に切除が可能です。特にポリープの一部に癌を伴う腺腫内癌の場合は、内視鏡的ポリープ切除術で治療可能な例が多いです。一方、粘膜下層の癌(SM癌)の場合は基本的には手術療法(腹腔鏡下大腸切除術)が必要となります。
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・進行大腸癌の治療方針
基本は手術療法(腹腔鏡下手術あるいは開腹術)です。結果的にリンパ節転移が認められた場合はステージⅢとなりますので、術後の補助化学療法(抗癌剤投与)が必要となります。また最初から遠隔転移(肝転移、肺転移、等)を伴う高度進行例では化学療法の適応となります。しかし、最近の化学療法の発展により遠隔転移を伴う例でも化学療法が奏功すれば、平均余命は約2年となっています。
※万が一大腸癌が判明した場合は、患者様のご希望に沿って専門病院を紹介します。
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